スターピープルより

民族や宗教の違いを越えて一つの意識を創る
述:ダスカロス 訳:根本泰行
Researchers of Truth Newsletter Vol.9A からの転載
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キプロス

『9月11日に起きた悲劇的な出来事によって、私たちの世界は大きく揺り動かされました。この出来事が原因で苦しんでいる皆さん、私たちのハートと祈りはあなた方と共にあります。私たちの祈りはスピリットと共にあり、「真理の探求者たち」(注1)の教えと愛と智恵によって力を与えられています。
以下の文章は、1990年3月20日のストア(注2)での講義から抜粋したものですが、その中でダスカロスは国家と国家の間の対立について、そしてまた、知らず知らずのうちに「国家のエレメンタル」を活性化してしまうことの危険性について、語っています--』

 

エレメンタルが持つ力

これらの国家的な記念日(注3)を迎えるたびに私たちがいつも感じることは、こうした行事を開催することによって、いわゆる「敵」側の感情も同時に強化してしまっているのではないかということです。

エレメンタル(注4)を創る際には最新の注意を払わなくてはなりません。グループが創り出すエレメンタルには家族が創るものもあれば、社会や国家が創り出すものもあるのです。

人類は誰も彼もがみずからが創り出したエレメンタルの奴隷となってしまっています。そしてそれゆえに人類は今なお苦しんでいるのです。

 

「目に見えないガイド」の働き

さて皆さん、これらの国々はレバノン(注5)で、どんなことを計画し、何を成し遂げたでしょうか。そしてその結果どれだけ多くの血が流されたのでしょうか。あなた方はよくご存じのことでしょう。

これらの国々はキプロス(注6)でも同じような計画を立てなかったと思いますか。勿論キプロスでも彼らは同様の計画を立てたのです。

でも、彼らは成功しませんでした。どうして彼らは成功しなかったのでしょうか。

なぜかと言えばそれは、彼らの計画が遂行されることを私たちが許さなかったからです。

もっとも内側のサークル(注7)のメンバーがこの種の仕事をしており、キプロス全体を愛の波動で、そして愛の雰囲気で絶えず包み込んでいるのです。

実際に、イスラム教徒のトルコ系キプロス人とキリスト教徒のギリシャ系キプロス人の間には、一度も衝突が起こりませんでした。

例外的に二つの事件が起こりましたが、それは国家的な原因によるのではなくて、個人的な愛情のもつれによるものでした。どうして状況が安定しているのか双方で不思議に思っているようですが、私たちはしょっちゅう爆弾からヒューズを取り去ってきたのです。(注8)

でも、どうしてそんなことができるのでしょうか。もし私たちのグループのメンバーが --私は彼らのことを「目に見えないガイド」と呼んでいるのですが(注9)-- ほんのわずかでも憎しみを抱いていたとしたら、そうしたことはできないでしょう。ですが、トルコ人の命や血は、私たちにとってはまったく等しく聖なるものなのです。

 

民族や宗教の違いを越えた一つの意識

今、私たちは、キリスト教徒とイスラム教徒の両方を含んだ、キプロス人としての一つの意識を創り上げようとしています。

スイスではこのような試みに成功しています。スイスの人々はスイス意識を創り上げました。

言語として、ドイツ語、フランス語、イタリア語のどれを使っていようとも、あなたはスイスにいればスイス人なのです。

私たちが今キプロスで行おうとしていることは、まさにこれなのです。キプロス人としての一つの意識を創り上げることなのです。

トルコ語を話そうが、ギリシャ語を話そうが、そういった使用言語や民族や宗教とはまったく関係なく、キプロスに住んでいる人は皆等しくキプロス人であり、互いに兄弟姉妹なのです。皆、一緒になって生きていかなければなりません。

この試みは最後には必ず成功すると私は思っています。

 

私は一人の人間、所属するのは地球

私の指導の元に、東ドイツと西ドイツの両方で、ドイツ人の友人たちのグループが働いています。彼らこそが、ベルリンの壁を崩壊させたのではなかったでしょうか。この壁はもっともっと長い間必要とされるものであるかのように、人々は語っていなかったでしょうか。これはいったいどういうことでしょう。

私たちは、建設的な形で、互いに協力して働いていかなくてはなりません。

邪悪なエレメンタルはたくさんの邪悪な振る舞いを引き起こすことができるかもしれませんが、その一方で、愛のエレメンタルはたくさんの愛に溢れた行為をなすことができるのです。

誰かが次のように問うかもしれません。「どうしてあなたはそんなことをするのだ? フランス人のことはどのように思っているのだ?」。

その時、私はこう答えるでしょう。「国家主義というものはとてもよくないものです。あなたは私が何者なのかと問い質すかもしれません。私は一人の人間なのです。私がどの国に属しているのかと尋ねるかもしれません。私は地球という惑星に属しています。それでは国家とはいったいなんでしょう。それは、一つの大きな建物の中の個々の小部屋にすぎないのです。そこに私たちの家族が住んでいます。そして私の家族とは、人類一人一人すべてのことなのです」。

 

敵も味方もなく、ただ兄弟姉妹として

講義を始める前に、私たちがいつも唱えている祈りはどのようなものでしょうか。「生命であり、愛であり、慈悲である神よ、あなたの真理を理解することができますように、私たちの理性を光で照らし出してください」。

この「真理」とは何でしょう。それは、すべての人々が互いに兄弟姉妹であり、父親母親である、ということです。

「あなたの愛を、唯一の神であるあなた御自身と他のすべての人々に対して映し出すことができますように、私たち一人一人の心を浄めてください」。

私たち一人一人すべてです。例外はありません。

私たちには、敵があろうはずがありません。

それでは私たちには味方がいるというのでしょうか。実は敵も味方もないのです。人類という一つの家族に属する兄弟姉妹、父親母親だけがいるのです。

皆一つの同じ家、すなわち地球という惑星に所属しています。地球は私たち皆にとっての共通の故郷です。

私たちの故郷は、国境や戦争を必要としません。私たちのハートが表現すべきものは、ただ愛のみです。私たちはいつもこのことを心に留めておく必要があります。

 

真実の愛の中で

もう一つ付け加えましょう。

もしあなたが愛するならば、そしてあなたが愛する方法を正しく知っているのならば(エゴイスティックなものではなくて、個人的な感情を離れた愛のことです)いったい誰かが、あなたを傷つけたり、あなたにとって敵となったりすることがあり得ると思いますか。

実は、真実の愛の中ではそのようなことは決して起こらないのです。

 

人々の助けとなるために

関連して重要なことは、多くの人々が想いを一つにして祈ると、その回り一帯にプラスの変化を及ぼすということが広く知られるようになってきたということです。

人口の1%が祈りによって一体化すると、その地域における人々の行動に顕著な変化が現れる、ということが、いまや科学的に測定され、証明されるようになってきています。これこそが、想念の力であり、愛の強さなのです。

この世界には未だに多くの苦痛や悲しみや戦いがあります。多くの人々が、人類が負っている傷を癒そうと望んでいますが、その一方で自分たちがとても非力であると感じています。

地球全体を覆うようにして、「真理の探求者」たちのネットワークが作られており、世界の平和と調和を定期的に祈っています。こうしたグループに是非あなたも参加してください。

ダスカロス

(終わり)

訳注

(注1)ダスカロスは、兄弟姉妹として共に真理を追究していく同胞のことを「心理の探求者」と呼んだ。

 

(注2)「真理の探究者」のサークルのために使われたダスカロスの自宅の一室のこと。

 

(注3)3月25日のギリシャの独立記念日、ならびに4月1日のギリシャ・キプロス国家記念日を指していると思われる。

 

(注4)人が心に抱く想念、願望、欲望、感情、思考はすべてエレメンタルであり、特有の形とエネルギー、そして知性を備えている。

いったん作り出されたエレメンタルは、弱体化することはできるものの絶対に消え去ることはない。いつの日か必ず、創られたときに設定された目的を達成する。エレメンタルの性質をよく理解し、上手に扱うことが大切。

 

(注5)レバノンは1943年にフランスから独立したが、その際フランスはキリスト教徒が多数派となるように国境を定めた。ところがその後、イスラム教徒が増加し、権力者側のキリスト教マロン派と、権力委譲を迫るイスラム教徒との間で覇権争いが続く。

1970年にはパレスチナ解放機構(PLO)がヨルダンから首都ベイルートに移りイスラム教徒側につく。

1975年、レバノン内戦が勃発。キリスト教徒側は隣国シリアに応援を求め、その結果1976年に停戦とシリア軍の停留が決まる。その後レバノン内で勢力を増したPLOは、パレスチナの地に独立国家を作ることを目的としてレバノン南部からイスラエルに対してロケット弾を打ち込むなどのゲリラ戦を開始。

このためイスラエル軍は国境を越えて報復攻撃を行い、1978年にはレバノン南部を「安全保障地帯」として占領、1982年にはベイルート以南のパレスチナ勢力を駆逐、PLOをレバノンから追い出す。

イスラエル軍の侵攻に抵抗して、南レバノンではイスラム教シーア派が武装組織「ヒズボラ」を結成、武装闘争を続けることになる。

1989年になってレバノン内部のキリスト教徒と、イスラム教徒の間では一応の和解に到達。

一方イスラエル軍は2000年5月に「安全保障地帯」から撤退したものの、レバノン南部の国境付近では相変わらずヒズボラとの間で対立が続いている。

このようにレバノンは中東諸国の中では最も脆弱な政治体制を持っていたために、イスラエルとアラブ諸国の間での「代理戦争」の場となってしまった。

 

(注6)ダスカロスの故郷キプロスは1960年にイギリスから独立したが、独立後もギリシャ系住民とトルコ系住民の間で紛争が絶え間なく続いた。

1974年4月にはギリシャ系軍人によるクーデターが起き、初代大統領マカリオス大司教が率いる政府が倒され、キプロスはギリシャの一部であると宣言された。

それに対してトルコは、トルコ系住民の保護を理由にキプロス島北部に侵攻し、島の四割を占領した。1974年11月には南部でマカリオス大統領が復権、国連も含めて国際社会はこのギリシャ系政府がキプロスで唯一の正当な政権であると認めている。

一方、北キプロス・トルコ共和国は1983年に独立を宣言したものの、トルコ以外の国には承認されていない。

以来、現在に至るまで、「グリーン・ライン」と呼ばれる緩衝地帯によってキプロスは南北に分断されたままになっている。

 

(注7)ダスカロスの教え子のグループの中で、最も高度な秘境的教えをダスカロスから直接学び、かつ実践していたグループを指す。

 

(注8)1995年にダスカロスが没するまでの間は、大きな衝突は起きなかったが、翌1996年8月になって「グリーン・ライン」上でトルコ軍の占領に反対するギリシャ系住民が、トルコ系の住民と警察官により殺害され、その翌月には逆にトルコ兵が射殺されるという事件が起きた。

その後も一触即発の危機を何度か迎えたが、2001年12月になって、国連の仲介によりキプロス共和国のクレリデス大統領と、北キプロス・トルコ共和国のデンクタシュ大統領がニコシア郊外の非武装地帯で会談し、分断の解消へ向けて27年振りに直接対話を続けていくことになった、とのことである。

 

(注9)肉体を持たないので、五感で感じることはできないが、高次元の波動の中に存在し、人知れず人々を手助けしている存在のこと。既にこの世では死んでいるために肉体を持たなくなった存在が多いが、ダスカロス自身や内側のサークルのメンバーのように、肉体を持ちながら意図的に肉体を離れて、高次元の身体を構築し、「目に見えないガイド」として働いている存在もある。

(株)ナチュラルスピリットより転載許可済 このページのトップへ